パートで働くなら、扶養や配偶者控除を意識しないほうがトクな理由

パートで働く方のなかには税金や給与から控除される金額を減らしたいがために、扶養の対象や配偶者控除の範囲内で働くことを選ぶ方もいることでしょう。しかし最低賃金が上昇を続け、厚生年金の加入範囲も広がっている今では、扶養や配偶者控除を意識せずに働くほうが得になる場合も少なくありません。

ここではパートで働く上で、扶養や配偶者控除を意識しないほうが得となる理由について解説していきます。

パート労働者が就業時間を抑える理由

パート労働者が就業時間を抑えたいと考える理由には、以下のものがあげられます。

  • 住民税も所得税も課税されないようにしたい(年収100万円以内)
  • 扶養の範囲で仕事をしたい(年収130万円未満)
  • 配偶者に関する38万円の控除を受けたい(年収150万円以内)
  • 厚生年金保険料が天引きされると、手取りが減る(週20時間以上)

これを裏付けるデータが、厚生労働省から開示されています。「短時間労働者の就労行動と社会保険適用の在り方について」によると、年収が90万円~130万円というパート労働者が多くなっています。

パート労働者の年収分布(就業調整の状況別)

厚生労働省「短時間労働者の就労行動と社会保険適用の在り方について」

このように「家計の負担を軽減したい」「給与からの天引き額を減らしたい」というニーズは、就業時間を抑えるインセンティブになっています。 たとえば年収130万円以上となった場合は、配偶者の扶養から外れてしまいます。このため会社の健康保険や、国民健康保険に加入しなければなりません。一例として東京都で働いている月収11万円(年収132万円)の方の場合、2019年度における協会けんぽの保険料は、以下の通りとなっています。

年齢 月々支払う保険料
39歳以下 5,445円
40歳〜64歳 6,397円

この金額は月収の56%に相当する金額ですから、影響は小さくありません。

就業時間を抑えるデメリット

就業時間を抑えることは税金や保険料の支払いを下げられるメリットがある一方で、ご自身の収入額は減ることになります。

それだけでなく、以下のデメリットがあることにも留意が必要です。

・選べる職種が限られる
・老後の年金が少ないままとなる

就業時間を抑えたい場合、スーパーや清掃業務などでは比較的募集が多くなっています。一方で専門的な技能を求められる業務には、なかなか就くことは難しいものです。たとえば鉄道会社本体の職員や消防士は、その代表的なものにあげられます。

また年収130万円未満、かつ60歳未満で配偶者の扶養に入っている方は、国民年金の第3号被保険者となります。月々の国民年金保険料を納めなくてよいことはメリットですが、老後の年金が国民年金だけとなる点はデメリットとなります。その金額は満額でも年780,100円であり、決して十分な額とはいえません。

扶養や配偶者控除を意識せず、働ける範囲で働くことがよい理由

もし働く意欲があるなら、扶養や配偶者控除を意識せず、働ける範囲で働くことをおすすめします。それは、以下にあげる3つのメリットがあるためです。

  • 収入が増加し、家計に入るお金が増える
  • 老後の厚生年金が増える
  • 仕事で重要な役割を任され、働きがいが得られる

収入が増加すると健康保険料の支払いが発生すること、配偶者控除が受けられなくなるため、かえって損になると考えている方もいるかもしれません。確かに月収130万円より少々上回る場合は健康保険料の負担が増えるため、この考えは正しい場合もあります。一方で配偶者控除がなくなっても配偶者特別控除があるため、増えた収入よりも税金の額が増えることはありません。そのため収入が増えれば、家計に入るお金も増えることになります。

一例として、妻が月収12万円(年収144万円)と月収13万円(年収156万円)を得ている例で考えてみましょう。夫の年間所得が900万円と仮定すると、税額は以下の通りとなります。

妻の年収 12万円(144万円) 13万円(156万円)
配偶者に関する控除額 所得税 38万円
住民税 33万円

所得税・住民税とも31万円

妻の月収が12万円の場合と比べた夫の負担増 - 18,100円
妻の所得税 20,500円 26,500円
妻の住民税 51,000円 63,000円

上記の通り、妻の月収が1万円アップすると所得税と住民税の合計額は36,100円増えます。一方で年収は12万円の増加となりますから、収入の増加分すべてが負担増にまわるわけではありません。

加えて老後の厚生年金額が増えることも、メリットの1つにあげられます。ここでは月収11万円(年収132万円)と、月収13万円(年収156万円)の例で考えてみましょう。

月収(年収) 必要な労働時間
(時給1,100円の場合)
1年間勤続した場合に
増える厚生年金の年額
11万円(132万円)
週22時間 26,298円
13万円(156万円) 週26時間 26,298円

もっとも時給1,100円という数字は、東京都や神奈川県では最低賃金に近い水準です。従って多くの職場では、これ以上の数字が期待できるでしょう。

3つ目のメリットとして、フルタイムで働くことができれば、あなた自身が職場でより重要な役割を任されることがあげられます。これにより、働きがいが得られる方も多いでしょう。もし業績アップに貢献できれば正社員に登用され、会社にとってかけがえのない人材として扱われる可能性もあります。

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