老後破綻を防ぐ最後の砦?70歳まで働くと老後収支は大幅改善!
老後破綻という言葉が関心を集め、老後の生活費をいかに賄うかに頭を悩ます人も多いでしょう。主な老後対策は下記の3つです。
・必要資金を貯蓄する
・公的年金額を増やす
・長く仕事を続ける
今回の記事では、65歳以降も仕事を続けることが老後対策として効果的であるということを解説します。また、「仕事をすると年金がカットされるのでは?」「年金の繰下げは得なの?」という疑問にもお答えしますので参考にしてください。
65歳以降の就労状況
総務省の「令和元年 労働力調査」によると、「65-69歳」の人の直近の就業率は48.4%と約半数の人が65歳以降も仕事を続けています。「70-74歳」でみても約1/3の人が就業しています。
(65歳以上の就業率推移)
65歳以上 | 65-69歳 | 70-74歳 | 75歳以上 | |
2010年 | 19.4% | 36.4% | 22.0% | 8.3% |
2015年 | 21.7% | 41.5% | 24.9% | 8.3% |
2019年 | 24.9% | 48.4% | 32.2% | 10.3% |
参考:総務省「令和元年 労働力調査・基本集計P7」(次表も同様)
約10年前と比べると、「65-69歳」、「70-74歳」の区分で就業率は10%以上増えており、公的年金が始まる65歳以降も仕事をする人が大幅に増えています。
また、男女別の就業率は次の通りです。
(2019年の男女別就業率)
65歳以上 | 65-69歳 | 70-74歳 | 75歳以上 | |
男性 | 34.1% | 58.9% | 41.1% | 15.6% |
女性 | 17.8% | 38.6% | 24.2% | 6.7% |
計 | 24.9% | 48.4% | 32.2% | 10.3% |
男性については、「65-69歳」で約6割、「70-74歳」でも約4割の人が仕事を続けています。政府は70歳定年制を推進していますが、就労実態としては70歳まで仕事をすることは普通のことになっています。
70歳まで働くと月収20万円でも老後収支は大幅改善
総務省統計局の「2019年家計調査」では、無職の夫婦2人のモデル世帯の家計収支は次の通りです。
①収入(主に公的年金):月237,659円
②支出(主に生活費) :月270,929円
①―②(毎月の赤字額):▲ 33,269円
家計の赤字(月33,269円)が65歳以降30年間(360か月)続くと仮定すると、老後の収支は約1,200万円の赤字になります。
もし、夫婦のどちらか、または2人が65歳以降も仕事を続けると老後の収支はどうなるでしょう。夫が70歳まで月収20万円で働いたと仮定して試算してみました。
・65-69歳の収支:毎月の黒字(237,659円ー270,929円+20万円)×60か月=1,000万円
・70歳以降の収支:毎月の赤字(▲33,269円)×300か月=▲998万円 70歳までの黒字で70歳以降の赤字が補える計算になります。月収を10万円とした場合でも、老後の赤字額は1,200万円から600万円に半減します。 税金や社会保険料などを考慮しない大雑把な試算ですが、70歳まで働くと老後の収支は大幅に改善することがわかります。
月収30万円なら公的年金は満額受け取れる|在職老齢年金の仕組み
公的年金をもらいながら一定以上の給料があると、年金の一部、または全部が支給停止になります。この仕組を在職老齢年金といいますが、65歳以降に年金の支給停止がかかるのは下記ケースです。
・基本月額(※1)と総報酬月額相当額(※2)の合計が47万円以上
(※1)老齢厚生年金の報酬比例部分の1/12
(※2)標準報酬月額+標準賞与額×1/12
参考:日本年金機構「65歳以後の在職老齢年金の計算方法」
大雑把ですが、賞与を含む月収と老齢厚生年金額の合計が47万円を超えると支給停止になります。支給停止額は次の式で求めます。
・(支給停止額)=(基本月額)ー(基本月額+総報酬月額相当額ー47万円)×1/2
つまり、老齢厚生年金額と月収を合計して47万円を超えた分の半分が支給停止になるということです。 老齢厚生年金額が月17万円を超える人は稀なので、賞与を含む月収が30万円以下なら公的年金は満額受け取れることになります。
年金繰下げの損益分岐点は82歳|人生100年時代への対応
65歳以降も仕事をして収入があるなら、年金の繰下げ受給も検討してみましょう。
年金の繰下げとは、老齢年金の受給開始を1年から5年遅らせることによって年金額を増やすことで、受給開始を1か月遅らせると年金額は0.7%増額(5年で最大42%)します。
※年金法改正により、2022年4月から繰下げの上限年齢が70歳から75歳に延長。引用:日本年金機構「老齢年金ガイドP3」 年金繰り下げの検討ポイントは次の通りです。
・①年金収入と勤労収入で生活費を賄えるか
・②老齢基礎年金と老齢厚生年金のどちら(または両方)を繰下げするか
・③65歳受給開始と繰下げて70歳受給開始の損益分岐点82歳をどう考えるか
受給開始が65歳の場合と70歳の場合の年金総受給額が、82歳で同じ程度になります。 長く生きることをリスク(老後生活費が足りなくなるリスク)と考えるなら、繰下げによって年金額を増やすことは長生きリスク対策になります。 今回の記事では、老後対策として65歳以降も仕事を続けるのが有効であることを紹介しました。長く働くことで老後収入を増やし、年金を繰下げ受給する余裕もうまれます。