通勤費の削減は社会保険料が減る一方で、将来の年金受給額にも影響。メリットとデメリットを解説

新型コロナウイルスにより、テレワークを積極的に活用する企業が増えています。なかでもテレワークを原則とした企業のなかには、通勤費を廃止、もしくは削減した企業もあらわれています。

テレワークにより通勤費が削減されることは見かけの収入が減るため、デメリットに感じがちです。しかし、一概にデメリットばかりとはいえません。この機会に給料のうち社会保険料の負担がどのくらいあるか、また将来の年金について考えることも必要です。

本記事では勤務先から通勤費が削減されるメリットとデメリットについて、解説していきます。

テレワークによる通勤費の削減には、メリットとデメリットがある

勤務先から通勤費が削減されるメリットとデメリットを、以下の表で確認していきましょう。

項目 内容
メリット ・雇用保険料が減る
・標準報酬月額の等級が下がり、健康保険料や厚生年金保険料が減る場合が多い
デメリット ・見かけの収入が減る
・休日に定期券を使えないため、交通費が自己負担となる
・将来の年金受給額が減少する

通勤費は多額でない限り、所得税の課税対象とはなりません。一方で少額であっても、社会保険料や雇用保険料が増加する原因になります。このため通勤費が減ることは、社会保険料等の減少につながるメリットがあります。

一方で通勤費の削減は厚生年金保険料の減少につながるため、将来の年金額が減ることはデメリットとなります。

見かけの収入は減るが月々の社会保険料も減るため、手取り額の減少幅は抑えられる

通勤費が削減されると、月々支払う健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料も減ります。このため、手取り額の減少はある程度抑えられます。

そもそも給与から天引きされる社会保険料の割合は、決して少ないものではありません。月額給与(通勤定期代込み)が30万円の方を仮定すると、月々天引きされる金額は以下のとおりとなります。

項目 従業員の保険料率 月額保険料
健康保険料(東京都・協会けんぽの場合) 40歳~64歳:5.83%
上記以外: 4.935%
40歳~64歳:17,490円
上記以外:14,805円
厚生年金保険料 9.15% 27,450円
雇用保険料 0.3% 900円
合計 40歳~64歳:15.28%
上記以外:14.385%
40歳~64歳:45,840円
上記以外:43,155円

40歳~64歳の方の場合は、給料に対して15%以上もの金額が保険料として天引きされています。

ここで通勤費が削減されれば、その分保険料の負担も減ります。一例として、15,000円下がった場合を考えてみましょう。

項目 通勤費減少前の保険料 通勤費減少後の保険料
健康保険料(東京都・協会けんぽの場合) 40歳~64歳:17,490円
上記以外: 14,805円
40歳~64歳:16,324円
上記以外:13,818円
厚生年金保険料 27,450円 25,620円
雇用保険料 900円 855円
合計 40歳~64歳:45,840円
上記以外:43,155円
40歳~64歳:42,799円
上記以外:40,293円

上記のとおり月々およそ3,000円の負担減となりますから、定期代の削減による実質的な収入減は12,000円前後で済みます。

なお収入が減っても、健康保険や雇用保険で受けられるサービス内容は変わりません。

将来の年金受給額が減る点はデメリット

通勤費の削減により、将来の厚生年金受給額が減少する点はデメリットとなります。実際にどの程度減るのか、確認していきましょう。

厚生年金のうち収入に応じて変わる部分は、「報酬比例部分」として計算されます。その率は原則として、賞与の額も考慮された「平均標準報酬額」の0.5481%です。

たとえば平均標準報酬額が2万円減少すると、その期間が1ヶ月だけでも年金額は110円減少します。この状況が1年間続くと、1,315円の年金額減少につながるわけです。

実際の影響額を、代表例で解説

通勤費が削減されると、従業員一人当たりどのくらい影響があるのでしょうか。ここでは代表的な例として、以下のケースを取り上げます。

  • 40歳
  • 東京都に勤務
  • 年収400万円(月収25万円、ボーナスは夏冬50万円ずつ)
  • 通勤定期代は6ヶ月で135,000円(1ヶ月あたり22,500円)

ここで完全テレワークが実施され、毎月の通勤定期代が0円となったケースを考えてみましょう。標準報酬月額は28万円から26万円となり、毎月支払う保険料は3,063円減少します。

項目 給与の天引き額
(通勤費削減前)
給与の天引き額
(通勤費削減後)
ボーナスの保険料額
健康保険料 16,324円 15,158円 29,150円
厚生年金料 25,620円 23,790円 45,750円
雇用保険料 817円 750円 1,500円
合計 42,761円 39,698円 76,400円

一方で年金額の算出に使う「平均標準報酬額」は、以下のとおりとなります。

・通勤費削減前:363,333円
・通勤費削減後:343,333円

ちょうど2万円の減少となり、1ヶ月削減されただけでも110円、1年を通じて削減された場合は1,315円、年金額が減ることになります。

このように通勤費の削減は負担が軽くなる一方で、数年にわたって続くと年金額に大きな影響を与えます。将来設計をする際には、通勤費が変動することも考慮しておくと安心です。

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