年金制度改革が進む時代をどう生きるか~公的年金の仕組みや老後資金準備のポイントを解説

国民年金・厚生年金・企業型DC・iDeCoなど様々な制度が混在する日本の年金制度。いくつもの制度の仕組みを理解するのは大変ですが、安心して老後を迎えるには各制度の特徴や違いを押さえてうまく活用することが大切です。今回は2020年5月成立の年金制度改正法の内容も踏まえながら、公的年金の仕組みや老後資金準備のポイントを解説します。

国民年金・厚生年金の制度概要と年金支給の現状

国民年金は3つの被保険者区分に分かれ、第2号被保険者である会社員や公務員は厚生年金にも加入します。20歳以上60歳未満の人のうち第2号被保険者に扶養されている配偶者(年収130万円未満)が第3号被保険者、自営業者や学生などが第1号被保険者です。

  第1号被保険者 第2号被保険者 第3号被保険者
主な該当者 自営業者 会社員・公務員 会社員や公務員の妻・夫
対象年齢 20歳以上60歳未満 - 20歳以上60歳未満
保険料負担(令和2年度) 月額16,540円 保険料率18.3% (保険料負担なし)

第1号・第3号被保険者の年金額は満額だと月額約6.5万円ですが、保険料免除期間などがあって減額される人もいるため実際の受給額の平均は5.5万円程になります。生活費として十分な金額ではないため、老後に備えるには他の方法も組み合わせなければいけません。

第2号被保険者の場合は給与額・賞与額をもとに決まる標準報酬月額・賞与額に料率18.3%を掛けて保険料額を計算し、会社と被保険者で半分ずつ負担します。月々の保険料額や将来受け取る年金額は所得によって変わりますが、平均的な年金受取額は月額約14.6万円です。

厚生年金の適用範囲は順次拡大、年金受給開始時期の上限は70歳から75歳へ

2020年5月に年金制度改正法が成立し、厚生年金の対象者が2022年と2024年に段階的に拡大されることになりました。満額でも月額6.5万円程しか老後に年金を受け取れない層を少しでも減らして、年金額がより多い第2号被保険者に組み込むことが主な狙いです。


パートタイムなど第1号・第3号に該当する短時間労働者を厚生年金(国民年金の第2号)の対象者にするための制度改正はこれまでにも行われており、厚生年金の被保険者数は純増傾向にあります。

出所:厚生労働省HP資料より抜粋

ただ昨今の年金制度改革は保険料負担のない第3号被保険者の区分を第2号に変更して新たに負担を強いる法改正と考えることもできるため、どうしても否定的に捉えられがちです。しかし厚生年金の対象になると年金額が増えることや障害年金の給付対象になる障害等級の範囲が広がることなどを考えれば、一概に悪い制度改革とばかりは言えません。
また今回の改正法では年金の受給開始時期の上限を引き上げることも決まりました。現在は60歳~70歳の間で受給開始時期を選択でき、65歳より早めると年金額が減額、逆に65歳より遅らせると増額されますが、選択できる年齢の幅が60歳~75歳へと拡大されます。

(参考)繰上げ・繰下げによる減額・増額率
減額率・増額率は請求時点(月単位)に応じて計算される。

・繰上げ減額率=0.5%※繰り上げた月数(60〜64歳) ※繰上げ減額率は令和4年4月1日以降、60歳に到達する方を大将として、1月あたり0.4%に改正予定。
・繰下げ増額率=0.7%×繰り下げた月数(66歳〜75歳)

請求時の年齢 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳 66歳 67歳 68歳 69歳 70歳 71歳 72歳

73歳

74歳 75歳
減額・増額率(改正後) △30%(△24%) △24%(△19.2%) △18%(14.4%) △12%(9.6%) △6%(△4.8%) - 8.4% 16.8% 25.2% 33.6% 42% 50.4% 58.8% 67.2% 75.6% 84%

出所:厚生労働省HPより抜粋

なお現在繰下げ受給を選択している人の割合は約1%と決して多くありません。ただ今後は60代や70代でも働く人が増えると予想されるだけに、老後の資金準備や生活設計を考える際に繰下げ受給も重要な選択肢になり得ます。一定の収入や貯蓄があって急いで年金を受け取る必要がなければ、繰下げ受給を選んで毎年の年金額を増やすのも1つの方法です。

出所:厚生労働省HP「厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに作成
注)受給開始時期の選択を終えた70歳の受給権者のうち厚生年金受給権者を除く者の繰上げ・繰下げ状況

国民年金と厚生年金は終身年金、他の方法と組み合わせて老後に備えることが大切

生きている限り年金が支給される終身年金である点が国民年金と厚生年金の大きな特徴です。長生きすれば納付した保険料総額より年金受取総額が上回ることも十分にあり得ます。
逆に確定拠出年金や民間生保が提供している多くの個人年金保険は有期年金であり、いつまでも年金が支給されるわけではありません。終身年金制度が公的に用意されていることの意味は大きく、老後の生活に必要な最低限の保障と安心を与えてくれる重要な制度です。


ただ公的年金で受け取れる年金額は決して多くないので、公的年金以外の方法も活用して老後に備える必要があります。確定拠出年金や個人年金保険、貯蓄や投資による資産運用など、複数の方法をうまく組み合わせて老後に備えるようにしましょう。
もちろん何十年も先の老後のことを想像したり今からお金をいくら貯めるべきなのか具体的にイメージするのは簡単ではありません。しかしよく分からないから対策を諦めるのではなく、何が起きるか分からないからこそ早めにリスク対策を行うことに意味があります。

老後を迎えたときに困ることがないように、たとえば60歳までに貯める目標額を決めて毎月少しずつ貯金をするなど、今の自分に何ができるのかを考えることが大切です。

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