公的介護保険だけで介護費用はまかなえる?

高齢化が進む日本では、介護サービスの需要が高まっています。国民が利用できる公的介護保険は40歳から加入となり保険料の支払いが始まりますが、介護状態となった原因の制限なく公的介護保険を利用できるのは、第1号被保険者となる65歳からです。介護リスクに備える民間の介護保険も登場していますが、公的介護保険のみで介護費用をまかなえるのでしょうか。

介護の実態

厚生労働省の平成31年介護事業状況報告によると、第1号被保険者における要支援・介護認定者数は18.3%でした。

(出典:厚生労働省「平成29年度 介護給付費等実態調査の概要」|総務省統計局「高齢者の人口 2018」を元に作成)

平成29年簡易生命表をみると、日本人の平均寿命は男性81.9歳、女性87.2歳と約5年の差があり、人口においても男女の差は年齢が上がるごとに大きくなります。しかし、人生100年時代における90歳以上の要支援・介護認定者は、男性は1.7人に1人、女性は1.3人に1人と大きな差はなく、介護リスクは男女ともに年齢が上がるほど高まるといえるでしょう。

介護にかかる費用

生命保険文化センターの調査によると、介護に要した期間の平均は54.5カ月(約4年)であり、介護を行なった(行なっている)場所は在宅が55.6%、施設が42.4%となっています。

(出典:生命保険文化センター 「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」を元に作成)

在宅で介護を行う場合、介護用ベッドの導入や、自宅をバリアフリーに改修するなど一時的に費用がかかることがありますが、介護の準備にかかった介護一時金は平均69万円でした。
在宅や施設などの介護にかかる費用の月額は、平均7.8万円となっています。しかし、介護度が重いほど施設や介護サービスの利用が多くなることから、それに伴い費用の負担も重くなっていく傾向があります。

公的介護保険の適用外となるのは?

公的介護保険は予防給付サービスと介護給付サービスに該当する介護サービスを受けた場合に支給対象となりますが、公的介護保険の自己負担分(1〜2割)や、介護施設の居住費・食費・生活費、介護保険の支給限度額を超えた部分については自己負担となります

  限度額(円) 受給者1人当たり平均費用額(円) 限度額に占める割合(%) 限度額を超えている者(人) 利用者に占める限度額を超えている者の割合(%)
要支援1

49,700
(50,030)

22,900 46.1 3,191 0.7
要支援2

104,000
(104,730)

41,960 40.3 1,432 0.3
要介護1

165,800
(166,920)

75,800 45.7 16,021 2.1
要介護2 194,800
(196,160)
104,560 53.7 31,095 4.2
要介護3 267,500
(269,310)
156,700 58.6 20,057 4.5
要介護4 306,000
(308,060)
190,490 62.3 16,209 5.3
要介護5 358,300
(360,650)
233,080 65.1 12.091 5.9
合計       100,096 2.9

(出典:厚生労働省 「区分支給限度基準額について」より)

公的介護保険の受給者で支給限度額を超えている人は、要介護度が上がるほど増えていることがわかります。公的介護保険適用の介護サービスを受けている約9割以上の人は支給限度額内ですが、公的介護保険適用外の有料介護サービス(配食サービス、送迎サービス、家事代行サービスなど)も数多く存在します。公的介護保険の自己負担分や介護施設の居住費・食費・生活費など介護サービスを利用する場合は、公的介護保険でまかなえない費用の負担が発生することは避けられません。

民間の介護保険には、介護リスクに備える「認知症保険」や「介護保険」が登場しています。認知症と診断された場合に給付される保険や、介護にかかる費用を一時金や年金で支給する保険などがあります。支払った保険料は介護医療保険控除の対象となるなど、介護に対する備えは重要視される項目です。
要支援・要介護の認定者は高齢者の人口とともに増え続けています。介護費用を預貯金や年金でまかなえるかどうか、介護のために家族などが離職した場合のリスクなどを十分に検討する必要があるといえます。

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