就労不能への備えは本当に必要なのか?

平均寿命の延びによる「人生100年時代」は、定年以降も働く高齢者が増えています。一生のうち働く期間が長くなれば、就労不能(働けない状態)になってしまうと以降の生活にかかる負担は大きいです。死亡リスクの低下に伴い、生きるリスクについて考える時代となりました。

主な身体的疾患による就労不能の実態

独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成29年に行った「病気の治療と仕事の両立に関する実態調査(WEB患者調査)」から、過去5年間にがん・心疾患・脳血管疾患・肝炎・糖尿病・難病の主な身体的疾患に罹患した人の就労不能の実態をみていきます。

全体の約8割は同じ勤め先で勤務を続けていますが、約2割は退職していることがわかります。

(出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「病気の治療と仕事の両立に関する実態調査(WEB患者調査))を元に作成)

休職制度を利用した人は全体の約3割で、その中でも2週間程度休職した人は26.3%、1カ月以上休職した人が31.5%、4カ月〜1年程度休職した人は36.7%にものぼります。休職中の収入については若年層ほど収入が低下している傾向にあり、休職前の収入の6〜8割程度という回答がもっとも多いです。

(出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「病気の治療と仕事の両立に関する実態調査(WEB患者調査)」を元に作成)

さらに休職期間が長いほど収入が低下する傾向があり、会社によってそもそも休職に関する規定がなかったり、勤続年数などで取得できる休職期間が異なっていたりします。

休職制度を利用して復職できても約2人に1人が「残業や休日労働の制限・禁止」「所定内労働時間の短縮」「仕事内容の変更」など働き方の見直しを行っていることから、復職しても罹患前のように働くことは難しいと考えられます。

メンタルヘルス不調による就労不能の実態

H24年の調査では、メンタルヘルス不調で1カ月以上休職・退職した労働者は25.8%でした。退職率が高いのは、「がん」「メンタルヘルス」「脳血管疾患」の順にありますが、精神疾患の患者数が年々増えていることから、メンタルヘルス不調による就労不能者は増加傾向にあると考えられます。

(出典:厚生労働省「平成11〜29年の患者調査」を元に作成)

今後3年間でみた「企業が課題とする労働者の疾病対策」で重要だとする項目は「メンタルヘルス」であり、企業が抱える課題として「休職者の復帰後の仕事の与え方・配置」が最も課題として認識が強いことから、主な身体的疾患と同様に働き方の見直しが必要になる可能性が高いです。

主な身体的疾患やメンタルヘルスの不調による就労不能のリスクは、死亡リスクの低下に反し高まっています。罹患後の休職・退職だけでなく、復職後も働き方の見直しによる収入の低下は免れないといっても過言ではないでしょう。収入が安定しない若年層ほど就労不能のリスクが高まり、子育て世代には生活費だけでなく教育費や住宅ローンの負担が重くのしかかります。定年を迎えてもなお働き続ける「人生100年時代」は、現役世代こそ就労不能への備えを重視し、生きるリスクを減らす自助努力が必要です。

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