目当てとする企業の株式が急騰しても、あわてて買わずに動向を見守ることが重要
株式投資をしていると、ときに急騰する場面に遭遇する場合があります。一例として2021年6月8日・6月9日と、エーザイ株がストップ高になったことは記憶に新しいもの。「好材料だから間違いなく買い」と考え、我先に買いに動いた方もいるかもしれません。 しかし株価は良い材料があれば一本調子に上がるといった、単純なものではありません。急上昇した銘柄を買ったら直後に大きく下落するといった、痛い経験をした方も多いでしょう。 本記事では急上昇した銘柄の「その後」をいくつか取り上げ、個人投資家が株取引をする際のポイントを考えます。
株価の急騰後、ずっと上がり続けるとは限らない理由
株価が急騰すると、「短期間に急激な上昇をしたのだから、しばらくは株価が上がり続けるだろう」と考える方もいるかもしれません。特に業績に大きく貢献する情報がもとになる場合は、そう考えたくなりがちです。 しかし株価は、「業績が良くなりそうなら上がる」「業績が悪くなりそうなら下がる」といった単純なものではありません。上がり続けそうに見えた銘柄が停滞または下がってしまう理由は、以下のとおりさまざまです。 ・利益確定売り ・配当落ち ・好材料の出尽くし ・決算発表前の様子見 ・良い情報を期待していたのに、発表された情報はそれほどでもなかったことへの失望感 ・投機的な売買による影響 目当ての銘柄が急騰していると、つい飛びつきたくなるものです。しかし上記に挙げた理由により購入しても全然上がらないどころか、株価が下落するおそれもあります。特に急騰し始めの頃は動向が定まらないため、急いで購入すると大きな損失をこうむるおそれもありますから、注意しなければなりません。
急騰した銘柄の「その後」は、さまざま
急騰した銘柄のその後は、さまざまです。そのまま上がり続ける場合もあれば、急落する場合もあります。ここではそれぞれのケースについて、実例を見ながら考えていきましょう。 まずは急騰後、すぐに急落したケースを見ていきます。 (引用:モーニングスター「日本銀行 株価詳細チャート」)
日本銀行は2021年2月下旬から3月上旬にかけて、2倍にアップした後3分の2に下落するという、大幅な価格変動があった銘柄です。
年月日 | 株価 |
2021年2月24日 | 26,400円 |
2021年3月1日 | 33,000円 |
2021年3月4日 | 54,000円 |
2021年3月9日 | 35,000円 |
急上昇したことを理由に3月4日前後に購入した方は、大きな損失をこうむってしまったことでしょう。2021年6月上旬の時点で、株価は3万円台の前半まで下落しています。
次に急騰後ピークに達し、下落基調に転じたケースを取り上げます。(引用:モーニングスター「アサカ理研 株価詳細チャート」)
アサカ理研の2020年11月20日時点の株価は、849円。それが12月22日には2,180円まで値上がりしました。わずか1カ月で、株価は2.5倍以上に上昇したわけです。
その後しばらくアップダウンを繰り返した後、2021年4月後半からは下落基調に。2021年5月後半からは、1,500円~1,600円台で推移しています。
もちろん急騰後、上昇基調を継続するパターンもあります。
(引用:モーニングスター「東芝 株価詳細チャート」)東芝の株価は、2021年4月に急騰しました。なかでも4月6日から7日にかけて、たった1日で700円値上がりしたことは、インパクトあるものです。
年月日 | 株価 |
2021年3月31日 | 3,740円 |
2021年4月6日 | 3,830円 |
2021年4月7日 | 4,530円 |
2021年4月9日 | 4.265円 |
2021年4月15日 | 4,895円 |
2021年4月21日 | 4,205円 |
2021年6月10日 | 4,720円 |
もっともこの事実だけを見て、「東芝なら急騰しても下がらないから買い」と誤解しないよう注意が必要です。実際に東芝のチャートをさかのぼると、急騰前より株価が下がってしまったケースもあります。急騰後はいったん下落した後、4月15日に4,895円をつけました。その後は4月21日にかけて下落した後、1カ月半の間緩やかな上昇基調となっています。
(引用:モーニングスター「東芝 株価詳細チャート」)
年月日 | 株価 |
2017年6月5日 | 2,556円 |
2017年6月12日 | 3,291円 |
2017年6月19日 | 3,310円 |
2017年7月14日 | 2,316円 |
このように急騰した銘柄のその後は、多種多様です。投機的な売買であればいずれ急落する可能性は高いものの、理由がそれ以外であっても急落しない保証はありません。また急騰後に株価の上昇が続いたことがあった銘柄でも、今回も同じとは限らないことに注意が必要です。このケースでは2017年6月5日から1週間かけて700円以上上昇した後、6月19日から7月14日まで下落。上昇前よりも株価が下がってしまいました。
目当ての銘柄が急騰した場合は、動向が定まるまで様子見がおすすめ
日ごろ気になる、または目当ての銘柄が急騰した場合は、どうしても買い注文を出したい衝動にかられます。しかし衝動買いが財産を失う原因になり得ることは、肝に銘じなければなりません。
このような場合は、まず急騰した理由を調べましょう。もし投機的な売買が理由の場合は、手を出さないことが賢明です。
それ以外の理由ならば、動向が定まるまで様子を見ましょう。急騰中は株価が乱高下しがちなもの。はっきり上昇基調となることがわかってから買い注文を出しても遅くありません。最悪の事態をなるべく回避するよう工夫することは、個人投資家に求められる1つのポイントです。