50代のiDeCo加入は手数料が節税メリットを上回る「コスト負け」にご用心

iDeCo(個人型確定拠出年金)には所得控除による節税効果がありますが、口座管理料(手数料)がかかることには注意が必要です。多くの場合は節税によるメリットが上回りますが、手数料のほうが多い「コスト負け」の可能性もゼロではありません。

iDeCoにかかる手数料総額を簡易的に計算する方法

手数料の総額は金融機関や加入期間、受け取り方法によって異なるため一概にはいえません。ここでは最低クラスの手数料を用い、一定のケースを想定して試算します。

<最低クラスの手数料>
①加入時に一回のみ2,777円
②掛け金を拠出する月は167円
③拠出せず運用のみ行う月は64円
④受け取りの際、振込の都度432円
(出典:モーニングスター個人型確定拠出年金ガイド 2019年7月25日時点。消費税率は8%。)

上記の数字を、手数料(加入してから最後に受け取るまでの総額)を表す計算式にあてはめると、次のようになります。

<計算式1>
(2,777円【①加入時手数料】+拠出する期間(年)×2,004円【②167円×12か月】+60歳から最後に受け取る年までの年数×768円【③64円×12か月】+【④432円×受け取る回数】)=手数料総額

仮に60歳から年金方式で最長の20年間、2か月に1回受け取るとすると、次のような簡単な計算式になります。

<計算式2>
拠出する期間(年)×2,004円+7万円※≒手数料総額

※7万円≒6万9,977円=2,777円【①加入時手数料】+20年×(③768円+④432円×6回/年)

50代の加入は手数料が節税メリットを上回る「コスト負け」もありうる

所得税率と拠出する金額、受け取る期間と頻度がすべて一定であると仮定すると、加入する年齢次第で「コスト負け」するかどうかが決まります。節税メリットが発生するのは、掛け金を拠出できる60歳までの期間だけだからです。拠出額が多ければ多いほど、拠出期間が長ければ長いほど、節税メリットも大きくなります。

最低額である月5,000円を拠出するとき、コスト負けの可能性が出てくる年齢を試算してみます。所得税は5%、住民税の10%と合わせた税率は15%とします。計算式は次のとおりです。

7万円【計算式2より】÷(5,000円×12か月×15%-2,004円)≒10年
60歳-10年=50歳

この式が意味するところは、「最低拠出額である毎月5000円を拠出し、確実に節税メリットを出すためには、所得税率5%の人の場合、50歳までにiDeCoに加入する必要がある」ということです。

裏を返すと、50歳までに加入すれば、ほとんどの人はコスト負けしません(専業主婦のように所得のない人は除きます)。

計算式は製造業の原価計算などで用いる「損益分岐点」と似たような考え方にもとづいています。受け取り時の手数料7万円は固定費、拠出時の手数料は変動費、節税メリットは売上、というわけです。

掛け金や所得税率が上がれば、「ここまでに加入すればコスト負けすることはない」という年齢も高くなります。ここではこの年齢を「損益分岐点年齢」と呼びます。

コスト負けしない条件とは

損益分岐点年齢を計算する際に、ひとつ注意が必要です。iDeCoは加入期間が10年未満の場合、受け取りを始められる年齢が後ろ倒しになることです。60歳から受け取り開始までの期間は拠出も受け取りもできません。<最低クラスの手数料> の場合、年間768円が発生し、そのぶん手数料総額が増えます。大した金額ではないので、大雑把に把握したい人は無視してもよいでしょう。考慮する場合は、計算した損益分岐点年齢を1~2か月前倒ししてください。

<加入期間と受け取り開始できる年齢>

加入期間 受け取り開始年齢
10年以上 60歳
8年〜10年未満 61歳
6年〜8年未満 62歳
4年〜6年未満 63歳
2年〜4年未満 64歳
1ヵ月〜2年未満 65歳


先ほどの計算式にもとづき、所得税率別に拠出額による損益分岐点年齢を計算したのが次の表です。計算結果には住民税の10%を含んでいます。受給開始年齢は損益分岐点年齢で加入したときのものです。

なお、社会保険料を20%として計算した目安の額面年収を付記しましたが、税率は家族構成や給与以外の所得、その他の所得控除など、人によって大きく変わるのでご注意ください。

<所得税率5%(目安年収440万円以下) 住民税10% 計15%>

毎月の拠出額 年間メリット 損益分岐点年齢 受給開始年齢
5,000円 6,996円 49歳11ヵ月 60歳
6,000円 8,796円 52歳0ヵ月 62歳
7,000円 10,596円 53歳4ヵ月 62歳
8,000円 12,396円 54歳4ヵ月 63歳
9,000円 14,196円 55歳0ヵ月 63歳
10,000円 15,996円 55歳7ヵ月 63歳
11,000円 17,796円 56歳0ヵ月 64歳
12,000円 19,596円 56歳5ヵ月 64歳
13,000円 21,396円 56歳8ヵ月 64歳
14,000円 26,796円 56歳11ヵ月 64歳
15,000円 24,996円 57歳2ヵ月 64歳
16,000円 26,796円 57歳4ヵ月 64歳
17,000円 28,596円 57歳6ヵ月 64歳
18,000円 30,396円 57歳8ヵ月 64歳
19,000円 32,196円 57歳9ヵ月 64歳
20,000円 33,996円 57歳11ヵ月 64歳
21,000円 35,796円 58歳0ヵ月 65歳
22,000円 37,596円 58歳1ヵ月 65歳
23,000円 39,396円 58歳2ヵ月 65歳

 ※年間の節税メリットから手数料を控除したもの

<所得税率10%(目安年収440万円〜670万円) 住民税10%  計120%>

毎月の拠出額 年間メリット 損益分岐点年齢 受給開始年齢
5,000円 9,996円 52歳11ヵ月 62歳
6,000円 12,396円 54歳4ヵ月 63歳
7,000円 14,796円 55歳3ヵ月 63歳
8,000円 17,196円 55歳11ヵ月 63歳
9,000円 19,596円 56歳5ヵ月 64歳
10,000円 21,996円 56歳9ヵ月 64歳
11,000円 24,396円 57歳1ヵ月 64歳
12,000円 26,796円 57歳4ヵ月 64歳
13,000円 29,196円 57歳87ヵ月 64歳
14,000円 31,596円 57歳9ヵ月 64歳
15,000円 33,996円 57歳11ヵ月 64歳
16,000円 36,396円 58歳0ヵ月 65歳
17,000円 38,796円 58歳2ヵ月 65歳
18,000円 41,196円 58歳3ヵ月 65歳
19,000円 43,596円 58歳4ヵ月 65歳
20,000円 45,996円 58歳5ヵ月 65歳
21,000円 48,396円 58歳6ヵ月 65歳
22,000円 50,796円 58歳7ヵ月 65歳
23,000円 53,196円 58歳8ヵ月 65歳

 ※年間の節税メリットから手数料を控除したもの

<所得税率20%(目安年収670万円〜1,100万円) 住民税10% 計30%>

毎月の拠出額 年間メリット 損益分岐点年齢 受給開始年齢
5,000円 15,996円 55歳7ヵ月 63歳
6,000円 19,596円 56歳5ヵ月 64歳
7,000円 23,196円 56歳11ヵ月 64歳
8,000円 26,796円 57歳4ヵ月 64歳
9,000円 30,396円 57歳8ヵ月 64歳
10,000円 33,996円 58歳1ヵ月 64歳
11,000円 37,596円 58歳1ヵ月 65歳
12,000円 41,196円 58歳3ヵ月 65歳
13,000円 44,196円 58歳5ヵ月 65歳
14,000円 48,396円 58歳6ヵ月 65歳
15,000円 51,996円 58歳7ヵ月 65歳
16,000円 55,596円 58歳8ヵ月 65歳
17,000円 59,196円 58歳9ヵ月 65歳
18,000円 62,796円 58歳10ヵ月 65歳
19,000円 66,996円 58歳11ヵ月 65歳
20,000円 69,996円 58歳11ヵ月 65歳
21,000円 73,596円 59歳0ヵ月 65歳

 ※年間の節税メリットから手数料を控除したもの

<所得税率23%(目安年収1,100〜1,400万円) 住民税10% 計33%>

毎月の拠出額 年間メリット 損益分岐点年齢 受給開始年齢
5,000円 17,796円 56歳0ヵ月 64歳
6,000円 21,756円 56歳9ヵ月 64歳
7,000円 25,716円 57歳3ヵ月 64歳
8,000円 29,676円 57歳7ヵ月 64歳
9,000円 33,636円 57歳11ヵ月 64歳
10,000円 37,596円 58歳1ヵ月 65歳
11,000円 41,556円 58歳3ヵ月 65歳
12,000円 45,516円 58歳5ヵ月 65歳
13,000円 49,476円 58歳7ヵ月 65歳
14,000円 53,436円 58歳8ヵ月 65歳
15,000円 57,396円 58歳9ヵ月 65歳
16,000円 61,356円 58歳10ヵ月 65歳
17,000円 65,316円 58歳11ヵ月 65歳
18,000円 69,276円 58歳11ヵ月 65歳
19,000円 73,236円 58歳11ヵ月 65歳

 ※年間の節税メリットから手数料を控除したもの

例えば年収600万円で所得税率10%の人が毎月1万円を拠出するとしたら、いつまでに加入すればよいか、上の表から考えます。損益分岐点年齢である56歳9か月までに加入すれば、コスト負けする可能性は極めて低いといえます。

なお、手数料を下げれば、損益分岐点年齢を超えてもコスト負けしない可能性はあります。

<手数料を削減する方法>
①拠出を毎月ではなく年払いにする
②受取を一括または年1~2回にする
③受け取る期間を短くする

手数料は金融機関によって異なります 復興特別所得税(所得税額に対して 2.1%)は考慮していません 試算において運用益や受取人の税金などについては一切考慮していません。

前へ

マネーリテラシーの高い人・低い人の考え方、行動特性の違い

雇用者における兼業・副業の実態とは?

次へ