iDeCoの節税メリットを給付時における課税が上回る「納税デメリット」が起こるのはこんなとき

節税メリットは給付時とのトータルで考える

iDeCo(個人型確定拠出年金)のメリットで特に大きいのが、所得控除です。拠出した金額を給与などの所得から差し引くことで、所得税と住民税を軽減できます。 所得税率20%※1の人が毎月2万円、20年間にわたってiDeCoに拠出したとすると、節税額は次のようになります。

<節税額の例>

12万円×12か月×(所得税20%+住民税10%)=7万2,000円(年間) 7万2,000円=20年間=144万円(累計)

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

 国税庁HP「所得税の税率」より(2018年4月1日現在)

この条件の場合、積み立てた額の約3分の1が戻ってきます。iDeCoの費用(金融機関によって異なります)には毎月数十円~数百円かかる口座管理料や、一回のみ3,000円前後かかる初回手数料などがありますが、これらを節税メリットが大きく上回るはずです。他のケースでも、節税額が手数料を上回ることがほとんどでしょう※2。

iDeCoの節税メリットは非常に大きいといえます。ただし受け取るときに税金がかかることには注意が必要です。受け取り時の税金が拠出による節税額を上回ることを、ここでは「納税デメリット」と呼びます。 ※1 本稿では税率の計算において、復興所得税(所得税の2.1%)は考慮していません。 ※2 以降の試算において、手数料や運用益など、税金以外のメリット・デメリットは一切考慮していません。

年金で受け取る場合の納税デメリット

iDeCoの受け取り方法は年金と一時金の2通りあり、併用も可能です。年金方式は5年~20年の間にわたって一定期間ごとに受け取ります。所得税の計算上は雑所得にあたり、公的年金等控除が受けられます。

年金を受け取る人の年齢 (a)公的年金等の収入金額の合計額 (b)割合 (c)控除額
65歳未満 (公的年金等の収入金額の合計額が700,000円までの場合は所得金額はゼロとなります。)
  700,001円から1,299,999円まで 100% 700,000円
  1,300,000円から4,099,999円まで 75% 427,500円
  4,100,000円から7,699,999円まで 85% 636,000円
  7,700,000円以上 95% 1,555,000円
65歳以上 (公的年金等の収入金額の合計額が1,200,000円までの場合は所得金額はゼロとなります。)
  700,001円から1,299,999円まで 100% 1,200,000円
  1,300,000円から4,099,999円まで 75% 375,000円
  4,100,000円から7,699,999円まで 85% 785,000円
  7,700,000円以上 95% 1,555,000円

国税庁HP「公的年金等の課税関係」より(2018年4月1日現在)

 公的年金等に係る雑所得の金額=(a)×(b)-(c)【上記の<節税額の例>を拠出した人が年金方式でiDeCoを受け取ったときの税金計算例】


<計算方法> 公的年金等に係る雑所得の金額=(a)×(b)-(c)

<拠出額> 40歳から60歳までの20年間、計480万円

<受け取り時の条件>
①受け取る期間は65歳~85歳の20年間
②収入は厚生年金の年188万円(平均的な収入の人が40年勤めた場合に受け取る月額約15万6千円×12か月)とiDeCoのみ
③受け取り額は拠出額と同じ、ひと月あたり2万円、年間24万円
④介護保険料と国民健康保険料の合計として年間15万円が所得控除され
⑤基礎控除は38万円 ※運用益は考慮しない。元本保証型の定期預金などで運用したと考える。

<所得>
(188万円+24万円-15万円-38万円)×100%- 120万円=39万円
公的年金等の収入が年間400万円以下の場合、所得税は5%が源泉徴収され、確定申告の必要はない。収入は212万円なので、確定申告不要に該当する。住民税の10%と合わせると、税金は次のとおり

<税金>
39万円×(5%+10%)=5.85万円

<iDeCoにかかる税金>
上記の税金うち、収入全体から按分して求める 5.85万円×(24万円/212万円)≒6,600円 では受け取り時の税金が節税メリットを上回ることはあるのでしょうか。可能性はゼロではありません。受け取るときの税率が拠出時を上回ったときにありえます。次の要素のうち、いくつかがそろうと所得が大きくなり、デメリットが出る可能性があります。

試算では、平均的な年金収入の人が払う税金のうち、iDeCoにかかる部分は6,600円程度となりました。拠出時の節税メリットは7万2,000円。受け取り時の税金はその10分の1以下です。

「納税デメリット」が出るのは、受け取り時の所得税率が拠出時を上回ったときです。試算したケースのように、拠出時の税率が20%の場合、老後の所得が695万円を超えると「納税デメリット」はわずかながら発生します。60歳以降も役員として勤めていたり、数百万円単位の不動産所得があったりしたときに起こりえます。

【受け取り時の所得が多くなる要素】
①受け取る期間が短く、1年間に受け取る金額が多い
②公的年金控除が小さい60歳から65歳の間に受け取る
③企業年金などに加入していたり現役時代の収入が大きかったりするため、 厚生年金などの所得が多い
④働いていたり不労所得があったりするなど、総所得がかなり大きい。

一時金で受け取る場合の納税デメリット

一括して受け取る一時金方式は退職所得に分類されます。税金計算は年金方式と違って他の年金や給与所得とは一緒にせず、独立して行います。

退職所得控除額の計算の表

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下

40万円×A

(80万円に満たない場合には、80万円)

20年超 800万円+70万円×(A)-20年)

国税庁HP「退職金を受け取ったとき(退職所得)」より(2018年4月1日現在)

【上記の<節税額の例>を拠出した人が一時金方式で退職金とともにiDeCoを受け取ったときの税金計算例】

<退職所得の計算方法>
{収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2}=退職所得の金額

<拠出額>
40歳から60歳までの20年間、計480万円

<受け取り時の条件>
①会社を退職したときに一括して受け取る
②会社の勤続年数は40年
③会社からの退職金は3,000万円

<退職所得>
[3,000万円+480万円-{800万円+70万円×(40年-20年)}]÷2=640万円

<税金> 640万円×(20%+10%)=192万円<①>

【iDeCoを受け取らない場合の退職金にかかる税金】

<所得>
[3,000万円+480万円-{800万円+70万円×(40年-20年)}]÷2=400万円

<税金>
400万円×(20%+10%)=120万円<②>

【iDeCoを受け取ることによって発生した税金】
<①>-<②>=72万円

試算では、iDeCoを受け取ることで増えた税金は72万円です。節税メリットは144万円なので、半分が相殺されたことになります。

単純計算すると、退職所得は退職所得控除後の所得の2分の1なので、税率が拠出時の2倍を超えなければ「納税デメリット」は発生しません。試算したケースの場合、会社から受け取る退職金が9,720万円を超えたときに該当します。

会社の退職金とは別の年にiDeCoを受け取った場合、退職所得控除は受けられない可能性があります。勤続年数は重複できないからです。ただし所得を2分の1として計算できることは同じなので、やはり「税率が拠出時の2倍を超えたときに納税デメリットが発生する」という法則は変わりません。例えば拠出時の所得税率が一貫して20%だった人の場合、iDeCoの受け取り額が1,390万円を超えると、退職所得にかかる税率が23%となります。

iDeCoの受け取り方法や期間は60歳~70歳の間で柔軟に決められます。「納税デメリット」を避けられないケースは、ごく稀といってよいでしょう。

【納税デメリットが出る可能性があるケース】

①年金の場合、受け取り時の所得が現役時代を上回る
②一時金の場合、受け取り額が現役時代の所得の2倍を上回る

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