相続税の納税資金準備は9割の人が不要~親の死に備えて本当に用意すべき費用とは?
親が亡くなり相続が起きると様々な費用がかかりますが、その一方でどんな費用がかかるのか具体的なイメージを持ちにくいのが相続です。高額な相続税がかかると過度に心配するのも、逆に「親から相続する財産を費用に充てれば良いから安心」と全く何も準備しないのも良くありません。今回は「親からの相続に備えた正しい資金準備」とは何かを考えます。
平成30年の相続税の課税割合は僅か8.5%
家族が亡くなると配偶者や子などが相続人になり、相続した遺産額に応じて相続税がかかります。ただし全てのケースで相続税が課税されるわけではありません。
遺産額が基礎控除額「3,000万円+600万円×(法定相続人の数)」以下ならば相続税はかからず、平成30年に亡くなった1,362,470人のうち相続税の課税対象になったのは僅か116,341人で8.5%です。
出所:国税庁ホームページ
平成27年に相続税の計算方法が変わって課税対象になる人が増えたとは言え、今でも9割以上の人は相続税が課税されず納税資金を準備する必要もありません。
また一昔前であれば「遺産の大半を土地が占めて、相続税の納税資金を自分で用意しなければいけないケース」が散見されましたが、近年はこの傾向に変化が見られます。
出所:国税庁ホームページ
相続税が課税されたケースにおいて、課税財産に占める土地の割合は平成21年の49.7%から平成30年の35.1%に大きく減少しています。
田舎の土地を相続しても困る人が相続放棄をするケース(いわゆる「負動産問題」)が増えていることが背景にあると思われますが、土地に相続税が課税されて納税資金の準備に困るケースは減っていると考えて間違いないでしょう。
相続税の納税額が100万円未満のケースも多い
相続税が課税された8.5%のケースを詳しく見ると、その半分以上は「法定相続人1人当たりの平均納税額が100万円未満」の範囲に含まれることが分かります。
課税価格(遺産額) | 被相続人の数 | 納付税額(A) | 法定相続人の数(B) | 1人当(A / B) |
(人 | (百万円 | (人 | (百万円 | |
5千万円以下 | 11,083 | 6,415 | 19,719 | 0.33 |
5千万円超 ~ 1億円以下 | 58,950 | 148,350 | 157,501 | 0.94 |
1億円超 | 46,308 | 1,953,934 | 145,088 | 13.47 |
全体 | 116,341 | 2,108,699 | 322,308 | 6.54 |
出所:国税庁HP資料より作成
被相続人の人数ベースでは、11,083人は相続人の納税額が平均33万円、58,950人は平均94万円です。あくまで平均額なので個々の納税額に幅はありますが、課税対象になった8.5%・116,341人のうち半分以上のケースが平均納税額100万円未満に収まっています。
相続に備えて用意すべきなのは納税資金よりも葬式費用
世間の大半の人は親が亡くなっても相続税が非課税か、課税されても100万円未満です。むしろ100~200万円程かかる葬式費用のほうが重い負担になります。葬儀終了後すぐに支払うケースも多いだけに、ほぼ間違いなくかかる葬式費用への備えが重要です。
たとえば親が亡くなった時の葬式費用に遺産を充てる予定でも、相続人がすぐに相続財産を自由に使えるとは限らず、相続人が葬式費用を一旦立替えるケースも少なくありません。
相続人が複数いる場合には、遺産分割協議が終わらないと遺産を相続したり自分のものとして使うことができませんし、凍結済の故人の銀行口座から預金の仮払い制度を利用して資金を引き出す場合でも、仮払いを受けるための必要書類を揃えるのに時間がかかります。
相続人の数が多くて均等に負担すれば1人当負担額が少なく済む場合はありますが、他の相続人に立替資金があるとは限りません。カード払いや葬儀ローンを利用できる場合もあるとは言え、葬儀関連費用の中には慣習的にどうしても現金・手渡しで払うものもあります。
親が亡くなった時にはまとまったお金が必要になることが多いので事前の準備が大切です。墓石の購入費用まで相続人が負担して費用が一気に膨らむケースもあります。実際に相続が起きてから慌てないためにも、費用の概算額を計算して早めに備えるようにしましょう。