結婚・子育て資金を子に贈与する最適な方法は?非課税制度の利用者が少ない現状を考察

贈与税が非課税になる制度と聞くとお得に聞こえますが、実際には利用者が少ないのが「結婚・子育て資金の贈与の非課税制度」です。親が結婚資金や子育て資金を子に贈与する際になぜ特例制度は使われないのか。制度の問題点について考察するとともに、「贈与税を節税しながら結婚・子育て資金を贈与する最適な方法」とは一体どんな方法なのかを考えます。

平成30年の非課税制度の利用者は796

結婚・子育て資金の贈与の非課税制度は、結婚資金の贈与が300万円まで、子育て資金の贈与が1,000万円まで非課税になる制度です。制度を利用するには、贈与を受ける子や孫の年齢が20歳以上50歳未満で前年所得が一定額以下などの条件を満たす必要があります。

  2015年 2016年 2017年 2018年
非課税制度の利用者数 3,374人 2,415人 920人 796人

出所:国税庁 統計情報より作成

2015年の制度開始当初から利用者は少なかったものの、2017年には遂に1千人を下回りました。この特例制度自体が不人気で、「子への資金贈与でわざわざこの特例制度を使う必要はない」と感じている人が多いことは間違いありません。

非課税の上限額(300万円・1000万円)で贈与できる世帯は多くない

ただ、贈与税は税率が高くて負担が重いだけに、まとまった金額が非課税になる制度自体は有意義な制度です。例えば親が20歳以上の子に1,000万円を贈与した場合、177万円の贈与税がかかります。177万円もの納税が必要なのか非課税になるのかでは大きな違いです。

しかし今の日本社会の状況からすれば、この非課税制度の上限額一杯の金額で贈与できる世帯はそもそも多くありません。節税効果を十分に活用できる世帯は少なく、家計調査(貯蓄・負債編/二人以上の世帯)によれば、2019年の年代別の貯蓄と負債は以下の通りです。

結婚資金や子育て資金を子に贈与することが多い50代を見ると、世代平均で貯蓄が1,704万円あります。しかしすぐに贈与に充てられる通貨性預貯金は443万円しかありません。

仮に子に200300万円を贈与すると、自身の生活ですぐに使える資金を半分またはそれ以上失ってしまいます。そのため子へ贈与できる資金額は現実的には100万円程が限界です。

そもそも贈与額が年間110万円以下ならば贈与税は非課税

結婚や子育て資金として親が子に贈与する金額が100万円程度ならば、そもそも非課税の特例制度を使う必要がなくなります。贈与税の計算では贈与額から基礎控除110万円を引いて税率を掛けるため、年間の贈与額が110万円以下であれば税金がかからないからです。

非課税枠が300万円や1,000万円に設定された背景には、結婚や子育てで一般的に必要とされる金額が考慮されたものと思われますが、必要な資金を親が全額支援できる現状にはありません。制度設計と実態が乖離したことが制度の利用者の少なさにつながっています。

また贈与税が非課税になる他の特例制度と比較したとき、住宅資金の贈与が2,500万円まで非課税になる制度や教育資金の贈与が1,500万円まで非課税になる制度より、利用者が極端に少ない点も注目すべきポイントです。

<非課税制度> 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
住宅資金 65,414人 66,726人 59,265人 58,654人 58,507人
教育資金 77,588人 85,587人 43,716人 38,196人 38,196人
結婚・子育て - 3,374人 2,415人 920人 796人
出所:国税庁 統計情報より作成

贈与税は金額が大きくなると税率が上がり税負担も重くなるので、逆に高額な贈与が非課税になる特例制度ほど節税効果が大きくなります。非課税額が高額な住宅資金や教育資金の特例制度だと節税効果にメリットを感じて高額所得者の一定数が利用しますが、非課税額が少額な結婚・子育て資金の特例制度では、節税効果が少なく利用者が増えていません。

子への贈与は自分の生活資金とのバランスを考えて行う

社会の実態としても節税効果の観点からも、わざわざ手続きの手間をかけてまで「結婚・子育て資金の贈与の非課税制度」を利用するメリットは大きくありません。
年間の贈与額が110万円以内ならば贈与税はかからず、さらにこの非課税枠110万円は毎年使えるので、複数年に渡って非課税枠の範囲内で子に資金支援を続ければ結果的に多くの資金を贈与できます。
贈与する親世代にとっても、自身の生活を考えて贈与を複数回に分けて行うほうが安心です。退職前の50代は自身の老後に備えて最後の貯蓄を行う世代であり、親の介護費用など今後どんな費用がかかるか分からず万が一への備えも必要になります。高額な資金を子に一括贈与して、非常時にすぐに使える手元資金が一気に減るのは得策ではありません。
年代別の貯蓄・負債の表を見ると、50代ではローンの返済が進む結果として貯蓄から負債を引いた純貯蓄がプラスに転じます。世帯によっては生活に余裕が出る場合もありますが、子への贈与は自分の生活資金とのバランスを考えて無理のない範囲で行うことが大切です。

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