増え続ける相続放棄~借金や「負動産」を相続しないための知識が今後益々重要に

大相続時代を迎えた日本で今「相続放棄」をする人が増えています。人口減少社会を迎えて年間の死亡者数が増加しているとは言え、それを上回る増加率で相続放棄が増えている背景には一体なにがあるのか。日本社会の現状を考察するとともに、今後益々重要になる「負の遺産を相続しないための備え」についてお伝えします。

年間の相続放棄件数は2017年に20万件を突破

相続放棄は故人の遺産を相続しない場合に行う手続きです。2000年に約10万件だった件数は2017年には20万件を突破し、わずか20年弱の間におよそ2倍になりました。
相続放棄をするには家庭裁判所で手続きが必要で、裁判所で受理された相続放棄の件数は以下のように推移しています。

出所:司法統計データより作成

そして人口動態調査から分かる同時期の死亡者数を並べてみると、相続放棄の件数の増加率が相対的に高く、相続放棄を選択する人の割合が増えている状況が読み取れます。

  2000年 2017年 増加率
死亡者数(A) 961,653人 1,340,567人 1.39倍
相続放棄の件数(B) 104,502件 205,909件 1.97倍
割合(B/A*100) 10.9 15.4 -

もちろん死亡者数の中には相続人がいないケースも含まれるので、全てが相続放棄の対象ではありません。ただ、他の要因に変化がなく死亡者の数のみ増えるのであれば、死亡者数に含まれる相続対象の事案や相続放棄をするケースの割合は変わらないはずです。

時代の変化と共に相続放棄をすべきケースが増えていることは間違いなく、これから相続に関わる世代にとっては、相続への備えの一つとして相続放棄を正しく理解しておくことが重要になります。

相続放棄を選択すべきケースとは?

相続放棄をする理由は人によって様々ですが、主なケースとして次の2つが挙げられます。
・故人に借金がありマイナスの遺産を相続したくない場合
・プラスの遺産を相続しても使い道がなくて困る場合
まず相続では現金などのプラスの財産だけでなく、借金も相続の対象になります。相続放棄をすると現金や土地など全ての遺産を相続できなくなる点には注意が必要ですが、遺産に借金がある場合に相続人が返済義務を負わないためには相続放棄をしなければいけません。
そして2点目のケースは例えば、田舎で暮らしている親が亡くなり、都会で暮らしている子が実家の土地や家を相続しても困るため相続放棄をする場合が該当します。これが所謂「相続の負動産問題」で、相続放棄が増えている理由の1つです。
住む予定のない土地を相続しても固定資産税などの費用負担だけが生じ、相続した後に売却しようとしても買い手が見つからず単なる負動産になるケースは少なくありません。都市部で暮らす人が増える中、田舎の不動産を相続せずに放棄する人が増えています。
現在の日本では三大都市圏、特に東京圏の人口比率が上昇傾向にあり、2015年の国勢調査で51.8%だった三大都市圏の人口比率はさらに上昇を続ける見込みです。

出所:総務省資料より抜粋
勤労世代が田舎を離れて都市部で働く傾向が続く可能性が高く、都市部に住む相続人が実家の家や土地を相続せずに放棄するケースは、今後も増え続けるものと考えられます。

相続放棄をする場合は手続き期限や法律上の規定に要注意

これから相続に関わる世代は、相続放棄が他人事ではなくより身近になるだけに「相続放棄のルール」を理解しておく必要があります。
まず相続放棄ができるのは「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」です。相続放棄は相続開始前、つまり家族が亡くなる前にはできず、借金や負動産を相続しないためには相続開始後に故人が住んでいた地域の家庭裁判所で手続きをしなければいけません。
また相続放棄は一度受理されると原則撤回ができないので慎重な検討が必要です。ただ相続に伴う様々な手続きには時間がかかります。3ヶ月はあっという間に過ぎてしまうので、相続が開始したら相続財産調査など各種手続きをすぐに始めるようにしましょう。
そして遺産を処分すると相続放棄ができなくなる点にも気を付けなければいけません。遺品整理をする中で遺品を売却したり故人の借金を一部でも返済すると、遺産を相続することを法的に認めたことになって相続放棄ができなくなります。
誤って借金を相続してご自身のライフプランが狂っては大変なので、相続が起きたときには弁護士や税理士などの専門家にまずは相談するようにして下さい。

相続対策は相続が起きる前から早めに行うことが大切

相続放棄ができる期間は3ヶ月と短いだけに、実際に相続が起きてから慌てないためにも事前の準備が欠かせません。
親が亡くなる前に財産の一覧を作ってもらえば相続財産の把握が簡単になりますし、遺言書を書いているのかどうかも生前に聞いておくべきです。亡くなった後に遺言書の有無を確認する場合は、部屋の中を探したり公証役場で照会を行うなど手間がかかります。
そして将来相続人になり得る人が集まって、財産の相続の仕方をあらかじめ話し合うことも大切です。本来の相続人が相続放棄をして、知らぬ間に自分が相続人になって借金を背負うリスクを減らせます。また感情的な対立から相続が争族になるリスクを減らす意味で、相続に対するお互いの考え方を共有しておくことが重要です。「後悔しない相続」を実現するためにも、相続対策は相続が起きる前から早めに始めるようにしましょう。

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