遺言に関する直近の利用状況と今後の見通し

直近における遺言の利用状況

遺言の作成方式としては、主に公正証書遺言と自筆証書遺言が利用されていますが、作成件数はいずれも増加傾向にあります。 日本公証人連合会によると、公正証書遺言の作成件数は 2000 年には約 6 万件でしたが、2018 年には 11 万件を超えています。この方式では、遺言書の作成に公証人がかかわるため、法律面や形式面の不備により遺言が無効となるおそれがないことから、自らの意思を確実に反映させたい人の利用が増えていると考えられます。また、作成された公正証書遺言に関する情報はデータベース化され、相続人が遺言の有無を簡単に照会できるなど利便性が高まっていることも増加の一因と思われます。 自筆証書遺言については、相続時には家庭裁判所が相続人を集めて遺言の状態を確認する検認の手続きが必要になります。司法統計によると、この検認の件数は 2000 年には約 1 万件でしたが、2017 年には 1 万 7 千件を超えています。自筆証書遺言は、書式に厳格な要件が定められているなど敷居が高い側面があるため公正証書遺言ほどではないですが、同様に利用は増加傾向にあるといえます。

公正証書遺言作成件数

今後における遺言利用の見通し

2019 年(平成 31 年)1 月 13 日より自筆証書遺言の方式が緩和されており、同日以降に自筆証書遺言を行う場合において、遺言書に相続財産の全部または一部の目録(財産目録)を添付するときは、その目録については自書しなくてもよいことになりました。

また、自筆証書遺言の場合、遺言書を自ら保管する必要があるため紛失・偽造のリスクがありますが、これに対しては2020 年(令和 2 年)7 月 10 日より、法務局に自筆証書遺言の保管を申請できる制度がスタートする予定です。保管が申請された場合、遺言保管所の施設内において遺言書の原本や、その画像情報、その他の遺言書に係る情報が保管される予定です。保管所に保管される遺言書については、家庭裁判所における検認手続きも不要となります。 なお、保管の際は、事務官が遺言書の適合性を外形的に確認するとされています。これによって、遺言の有効性が担保されるわけではありませんが、形式不備により遺言が無効となるケースは発生しにくくなります。

今後は、高齢化の更なる進展により相続の発生件数自体が増加すること、また、家族形態の多様化などを背景として、相続争いを防ぐための対策として遺言が定着してきたことなどから、遺言の利用件数は引き続き増加を続けると思われます。これに加えて、上記のとおり、作成時の煩雑さ、偽造・紛失リスク、形式不備で無効となるリスク、といった自筆証書遺言のデメリットに対して制度的な対応が施されることから、自筆証書遺言の利用が加速していくことも考えられ、遺言利用に関する今後の動向は注視に値するでしょう。

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